自分の知ってること、特に好きなもののことを、誰かと話している時に、知ってることなのに初めて知るフリをする癖がついた。
例えば、好きなテーマパークのイベントの話を振られて、本当は内容も時期もそこそこ把握してるんだけど「そんなのやるんだ!」とか「あれって結局どういう内容なんですか?」とか「いつまでやってるんですか?」みたいな基本情報を引き出すMC的振る舞いについ逃げてしまう。
なぜなら、もし相手より自分の方が詳しかった場合、相手の話の腰を折って気まずくなるかもしれないから。あとキモがられたくない。
また、相手の方が詳しいと分かった場合も、「あ〜あれね」と知った顔でスタートしておきながら新情報にぶつかったら恥ずかしいし、咄嗟に明るく切り返せる自信がない、そしておそらくそうなる可能性の方が高い。
この、どちらに転ぶか分からない、シュレディンガーの猫みたいな状況もまず怖い。
そういったリスクを考えると、明らかな嘘をつかない程度に、「知らないので教えて欲しいです」という顔をして、乗ってるシーソーの椅子をぐっと下げてしまう方が気が楽になる。
その方が会話がスムーズに進むんだったらそれでいい、と。
思えば、社会人になってから目上の人と話す時間が増えて、「自分を敢えて晒さずに、相手に喋らせた方が楽」みたいな防衛話術というか、会話の駆け引きに力を入れるようになった気がする。
しかし、元々その方面だけでやってきた訳ではない。
プライドが高い私は、どちらかというと知ったかぶりをしてしまうことの方が多かった。「知識があるのは良いことだ」「相手に合わせなければ会話が壊れてしまう」「質問してたら水を差すことになる」といった強迫観念のようなものがあったのかもしれない。
でも、それで結局相手の話を適切に聞き取れなかったり、本当に知ってることでは過度に偉そうな態度を取ってしまったりして、却って会話に影を落としてしまうことがあった。
その反省の裏返しが、今の知らないフリ癖になっているのではないかと思う。
どちらにせよ、相手を騙すような受け答えは不誠実だし、良くない癖だ。
でも、相手も自分も楽しくシーソーに乗れる趣味話って、難しいなあ。